インフレってなに?
──お金は減っていないのに、買えるものが減る話
公開 ・ 更新
ためトン ニュースで「インフレ」って、よく聞くようになったよね
聞くけど…正直、自分の暮らしと何が関係あるのか分からない
ききニャン
ためトン じつは、持っているお金は減っていないのに、買えるものが少なくなっていくんだ。いっしょに見ていこう
ニュースで「インフレ」(正式にはインフレーション)という言葉を、よく聞くようになりました。
ただ、それが自分の暮らしとどうつながるのかまでは、あまり説明されません。
この記事では、そのつながりを順番に見ていきます。
📖 この記事でわかること
- ・インフレとは何か、いまの日本はどうなのか
- ・なぜ日本銀行は、インフレを目標にするのか
- ・自分のお金に何が起きて、どう置けばいいのか
インフレとは、値段が全体として上がっていくこと
言葉の意味は、じつはとても単純です。
インフレとは、モノやサービスの値段が、全体としてじわじわ上がっていくことです。
反対に、全体として下がっていくのがデフレ(正式にはデフレーション)です。
大事なのは「全体として」と「じわじわ続く」の2つです。
では、全体で上がっているかどうかは、どうやって測るのでしょうか。
国が毎月調べています。
食料、電気代、家賃、電車賃、洋服。
暮らしに使うものを、毎年おなじ組み合わせで買ったとしたら、その代金は去年からどう変わったか。
これを数字にしたものが消費者物価指数です。
2020年の値段を100として、いまがいくつか、という形で発表されます。
インフレの2つの条件
いまの日本
1 全体として上がる
2020年より
+13.6%
2 上がった状態が続く
前年の同じ月より
+1.7%
→ 2つとも当てはまります。
日本はいま、インフレの状態です
※ ひとつの商品だけの値上がりや、今年だけの上昇は、インフレとは呼びません。2026年6月の消費者物価指数(総合)は113.6(2020年=100)です。数字は総務省統計局「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)6月分」(令和8年7月24日公表)によります。
日本銀行は、年2%のインフレを目標にしています
ここで、意外に思われるかもしれません。
値段が上がるのは困ることのはずなのに、日本銀行はインフレを目標にしています。
2013年1月から、目標は「消費者物価の前年比上昇率2%」と定められています。
なぜ、インフレになるほうがいいのでしょうか。
日本には、値段が下がり続けた時期(デフレ)がありました。
日本銀行の説明では、そのとき、こんなことが起きていました。
値段が下がるのは、うれしいことに見えます。
でも、安く買えるようになった一方で、給料は増えませんでした。
安く売るために、会社が人件費をおさえたからです。
それが何年も続き、日本全体で働いて受け取るお金は減っていきました。
日本銀行が目指しているのは、この逆です。
給料が上がりながら、値段もゆるやかに上がっていく。
その目安が、年2%のインフレです。
※ 日本銀行は、1990年代後半からの15年間について、「価格の下落、売上・収益の減少、賃金の抑制、消費の低迷、価格の下落という悪循環」が続き、名目でみた経済活動が縮小したと説明しています(日本銀行「なぜ『2%』の物価上昇を目指すのか」2014年3月20日)。一人あたりが受け取った金額も、同じ勤め先で昇給があった人はいますが、短い時間で働く人の割合が増えたことなどから、平均では1割以上下がりました(厚生労働省「毎月勤労統計調査」)。また、目指す姿を「賃金と物価の好循環」「賃金の上昇を伴う形での2%の持続的・安定的な物価上昇」と説明しています(日本銀行「2%物価目標の実現とわが国経済」2024年12月25日)。2%という数字は、①物価指数の計測誤差 ②物価下落と景気悪化の悪循環への備え(のりしろ)③国民の物価観、の3つの観点から検討されました(日本銀行「『物価の安定』についての考え方に関する付属資料」2013年1月)。
つまりインフレは、たまたま起きている一時的な出来事ではありません。
この先も続く前提で自分のお金を考えるほうが、現実的だということになります。
インフレになると、あなたのお金はどうなる?
ここまでは世の中全体の話でしたが、ここからは自分のお金の話です。
まずは、買うものを変えずに、値段を2020年といまでくらべます。
🛒 いつもの買い物
🍞🥛🥚
🥬🍎🧻
2020年に買うと
10,000円
🍞🥛🥚
🥬🍎🧻
いま買うと
11,360円
パンも牛乳も卵も、買う量は変えていませんが、レジで払う金額は1,360円ふえました。
※ 消費者物価指数の総合指数113.6(2020年=100)から、当サイトで計算した一例です。実際に買うものは人それぞれなので、体感とはずれることがあります。
2020年に1万円で買えていたものが、いまは同じ1万円では買えません。
これが「お金が目減りする」ということです。
短い期間ならわずかな差です。
では、日本銀行が目標にしている年2%がこのまま続いたら、どうなるでしょうか。
いま100万円の買い物は、物価が年2%上がると
| 何年後 | 同じ買い物 の値段 | 手元のお金 (利息なし) | 足りない分 |
|---|---|---|---|
| 5年 | 110.4万円 | 100万円 | 10.4万円 |
| 10年 | 121.9万円 | 100万円 | 21.9万円 |
| 20年 | 148.6万円 | 100万円 | 48.6万円 |
| 30年 | 181.1万円 | 100万円 | 81.1万円 |
🔁 30年で、どれだけ変わるのか
手元の100万円は、30年後も 100万円のままです。
でも、同じ買い物にかかる金額は 181.1万円。
81.1万円が足りません。
その100万円で買えるものは 44.8%減り、いまの半分ちょっとになります。
毎年2%なのに30年で81.1%も上がるのは、上がったあとの値段に次の年の2%がかかるからです。
投資でよく聞く複利が値段にも働くということです。
※ 当サイトで計算した一例です。日本銀行の目標である年2%が、そのまま毎年続いた場合の計算で、実際の物価はこのとおりに動くとはかぎりません。手元のお金には利息をつけずに計算しています。預金に置いて金利がついた場合どうなるかは、このあとの「預金の金利では、追いつきません」で見ます。
「投資は、金額が減るかもしれないから怖い」。
そう感じる方は多いと思います。
たしかに投資には、金額そのものが減る年があります。
いっぽう貯金なら、金額が減ることはありません。
その代わりに減っていくのが、ここまで見てきた買えるもののほうです。
貯金だけにしておくこともひとつのリスクだというのは、これを指しています。
🐷 ためトンのひとこと
ためトン 数字がいっぱい出てきたね。いちばん伝えたいのは、「同じお金でも、買えるものが変わる」ということなんだ
上がったものと、上がらなかったもの
では、何の値段が変わったのでしょうか。
暮らしに使うものを、種類ごとに分けて見てみます。
2020年を100としたときの、2026年6月の値段
| 費目 | 指数 | 2020年との差 |
|---|---|---|
| 食料 | 128.6 | +28.6% |
| 家具・家事用品 | 125.2 | +25.2% |
| 光熱・水道 | 120.0 | +20.0% |
| 住居 | 105.0 | +5.0% |
| 交通・通信 | 102.0 | +2.0% |
| 教育 | 89.9 | −10.1% |
| 全体(総合) | 113.6 | +13.6% |
※ 上と同じ消費者物価指数(全国 2026年6月分)の、10大費目の指数です。
いちばん上がったのは食料で、2020年より28.6%高くなっていました。
毎日買うもの、毎月払うものほど、上がり方が大きくなっています。
いっぽう、教育にかかるお金は2020年より10.1%下がり、交通・通信も、6年で2.0%の上昇にとどまっていました。
下がっているものがあっても、インフレと食い違うわけではありません。
インフレは、ひとつひとつの値段ではなく、全体としてどうかを見る話だからです。
暮らしに使うもの全体では、2020年より13.6%上がっています。
つまり、同じ暮らしをするのに、6年前より1割以上多くお金がいるということです。
なお、教育が下がったのは、学校が値下げをしたからではありません。
高校の授業料に国の支援が広がって、家庭が払う額が減ったためです。
預金の金利では、追いつきません
預金に置いておけば利息がつくので、そのぶんは目減りを埋めてくれます。
では、いまの金利はインフレに追いついているでしょうか。
預金の金利と、物価上昇率(年1.7%)
| 預金の種類 | 年利 | 物価上昇率 との差 |
|---|---|---|
| ゆうちょ銀行の通常貯金 | 0.400% | −1.30% |
| 同・定期貯金10年 | 1.250% | −0.45% |
※ 金利はゆうちょ銀行の公式サイト、物価の上がり方は総務省統計局の消費者物価指数(総合)の前年同月比1.7%(2026年6月分)によります。通常貯金・定期貯金とも、2026年8月10日に引き上げられた金利です。金利は今後も変わります。
いちばん金利の高い定期貯金10年でも、物価の上がり方には届いていませんでした。
これを金額にしてみます。
💰 100万円を10年、定期貯金に預けたら
| 10年後 | 増えた分 | |
|---|---|---|
| 預けた100万円 | 113.2万円 | +13.2万円 |
| いま100万円のもの | 118.4万円 | +18.4万円 |
利息はついたのに、同じものを買うには 5.2万円足りません。
※ 当サイトで計算した一例です。利息は税引前で計算しています(実際は利息から20.315%が引かれます)。物価の上がり方は年1.7%が10年続いた場合として計算しました。このあとの30年の計算は、10年ものの定期貯金を3回預け直して、同じ金利が続いた場合としています。
期間を30年にのばしても、結果は変わりません。
いちばん高い金利(年1.250%)のままでも、100万円は145.2万円にしかなりません。
同じ買い物は物価が年2%のまま上がると181.1万円になる計算なので、35.9万円足りません。
預けた額が減らないのは、預金の大きな強みです。
ただ、預けている期間が長くなるほど、足りない分は大きくなります。
🐷 ためトンのひとこと
ためトン 困るのはどのお金なのかは、年金の話のあとで、いっしょに見ていこう
年金は、インフレに追いついてくる?
預金に置いたままでは、物価の上がり方に追いつきませんでした。
では、これから受け取る年金はどうでしょうか。
年金額は毎年見直されるので増えますが、これも物価の上がり方には追いつきません。
📊 年金の上がり方は、どうやって決まるのか
令和8年度の年金は、法律で決められた2つの手順で決まりました。
① 物価と賃金のうち、低いほうを選ぶ
物価の上がり方 = 3.2%
賃金の上がり方 = 2.1% ← 低いのはこちら
② そこから、年金の上がり方を抑える調整を引く
2.1% − 0.2% = 1.9%
この調整は、将来の世代が受け取る年金を確保するためのものです。
この1.9%が、前の年度とくらべた国民年金の上がり方です。
金額でみると、満額・1人分で月69,308円から70,608円へ、1,300円ふえました。
※ 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(令和8年1月23日)によります。正式には、物価の上がり方=物価変動率、賃金の上がり方=名目手取り賃金変動率、引かれる調整=マクロ経済スライド、決まった上がり方=改定率といいます。厚生年金(報酬比例部分)のマクロ経済スライドは−0.1%で、改定率は+2.0%です。
物価が3.2%上がったので、同じものを買うには2,200円ふえている必要がありました。
実際にふえたのは1,300円で、月900円足りません。
1年分では、1万1,000円ほど足りない計算になります。
しかも、この差が出たのは今年だけではありません。
年金の上がり方を抑える調整は、2015年度からの12年間で7回行われています。
年金の金額は毎年増えていても、物価との差は調整のたびに開いていきます。
だからといって、年金が当てにならないという話ではありません。
年金は生きているかぎり受け取れる、いちばん頼りになる収入です。
いくら受け取れそうかは、年金って、結局いくらもらえるの?で確かめられます。
生活費のうち年金で足りない分は、貯めたお金から出していくことになります。
インフレに困るのは、どのお金?
預金の金利も年金も、物価の上がり方には追いつきませんでした。
ただ、手元のお金の全部が困るわけではありません。
近いうちに使うお金は、目減りより、必要なときに確実に使えることのほうが大事だからです。
では、どのお金が困るのか。
手元のお金を、使う時期で3つに分けると見えてきます。
使う時期が近いお金ほど、値動きのない場所に置いておきます。
① 急な出費にそなえるお金
病気やけがの急な出費や、失業で収入が止まったときにそなえるお金です。
生活費の3〜6か月分を目安に、いつでも下ろせる預金に置いておきます。
収入が変わりやすい自営業・フリーランスの方は、半年から1年分あると安心です。
ここは目減りより、すぐ使えることを優先します。
② 数年以内に使うお金
車の買い替え、住宅の頭金、近い将来の教育費など、使う予定が決まっているお金です。
これも預金に置きます。
使う直前に値下がりしていたら、予定そのものが崩れてしまうからです。
③ 当分使わないお金
10年、20年と先まで使う予定のないお金です。
ここだけを、投資に回します。
インフレの上がり方を上回ることを目指せるのは、この部分です。
📌 この記事が前提にしているもの
ここでいう投資は、全世界株式やS&P500といった指数に連動する投資信託を、長く積み立てていく形です。
1本でたくさんの会社に投資するので、1社がだめになっても、全体への影響はわずかです。
1社だけの株には、この考え方は当てはまりません。
くわしくは投資って危ないんでしょ?をご覧ください。
当分使わないお金まで全部を預金に置いたままにすると、その間ずっと目減りが続きます。
使うのが10年、20年も先のお金なら、差はそれだけ大きくなります。
とはいえ、投資に回すのは、手元のお金の全部ではありません。
急な出費にそなえるお金と、数年以内に使うお金を先に確保して、残った分だけを投資に回します。
そうしておけば、投資に回した分が値下がりした年でも、生活費のために売らずにすみます。
当分使わないお金があると分かったら、次は口座選びです。選び方は「NISAって、じゃあどう始めるの?」でくわしく説明しています。
まとめ:減らないことと、目減りしないことは違う
📝 覚えておきたいこと
- ・モノやサービスの値段が全体として上がるのがインフレ
- ・手元のお金は減らなくても、買えるものは減る
- ・預金の金利も年金も、物価の上がり方に届くとはかぎらない
今日から何かを大きく変える必要はありません。
まずやることは、いま持っているお金を3つに分けてみることです。
急な出費にそなえるお金、数年以内に使うお金、当分使わないお金。
紙に書き出すだけなら、10分もかかりません。
分けてみて、当分使わないお金がなくても、心配はありません。
急な出費にそなえるお金から順に整えていけば十分です。
🐷 「投資に回した分はどう増えるの?」という方は、複利ってなに?へ。
「貯めたあと、どう使うの?」という方は、貯めたお金は、どう使う?へどうぞ。
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よくある質問
Q. インフレになると、預金は損をするということですか?
A. 預金に置いたお金そのものは減りません。100万円を預ければ、1年後も100万円と利息が残ります。減るのは「そのお金で買えるもの」のほうです。2026年6月の消費者物価指数は、2020年を100として113.6でした。同じ買い物をするのに、2020年より13.6%多くお金が必要になっている状態です。ただし、これは預金が悪いという話ではありません。近いうちに使うお金は、値動きのない預金に置いておくのがいちばん確実です。目減りが問題になるのは、当分使う予定のないお金まで全部を預金に置いたままにしている場合です。
Q. 給料も上がるので、インフレでも大丈夫ではないですか?
A. 給料が物価と同じだけ上がる年もあれば、追いつかない年もあります。厚生労働省が令和8年度の年金額を決めるときに使った数字では、物価の上がり方が3.2%だったのに対し、賃金の上がり方は2.1%でした。給料が上がるかどうかは勤め先や働き方で変わりますし、退職後は給料そのものがなくなります。「上がるはず」を前提にせず、手元のお金の置き方も一緒に考えておくと安心です。
Q. インフレに強いと言われるものを買えばいいのですか?
A. 金や不動産など、いろいろなものが「インフレに強い」と紹介されます。ただ、そうした商品はそれぞれに値動きのくせや手数料があり、初心者が最初に手を出す場所ではありません。当サイトでは、まず「使う時期でお金を分ける」ところから始めることをおすすめしています。近いうちに使うお金は預金に、当分使わないお金は投資に回す。この形が整ってから、次の一手を考えても遅くありません。なお当サイトでは、個別の商品についての助言は行っていません。
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