働き手が亡くなったら、遺族年金はいくら?
──残された家族を支える、2つの年金
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もし、一家の働き手にもしものことがあったら。
残された家族の暮らしは、どうなるのだろう。
考えたくないことですが、頭のどこかで不安に思っている方は多いと思います。
このとき、残された家族を支えるのが遺族年金(いぞくねんきん)です。
公的年金に入っていた方が亡くなると、その家族に毎年お金が支給されるしくみです。
多くの方が「死亡保険」を思い浮かべますが、その前に、まず国の支えがあります。
ただし、いくら受け取れるかは、亡くなった方の働き方と家族構成で大きく変わります。
まず「我が家の場合はどうなるか」を知ることが、保険の要不要を考える出発点になります。
📖 この記事でわかること
- ・遺族年金の「2つの年金」と、誰が受け取れるか
- ・会社員と自営業で、支えの厚みがどう変わるか
- ・我が家に足りるかを確かめる方法と、2028年の見直し
📌 この記事が前提にしているもの
金額は、日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」にもとづく令和8年度(2026年度)のものです。
保険料をきちんと納めている(納付要件を満たしている)ことを前提にしています。
「会社員・公務員」は厚生年金に入っている方、「自営業・フリーランス」は国民年金だけの方、という意味で使っています。
受け取れるかどうかや正確な金額は、一人ひとりの加入記録で決まります。ご自身の見込みは、ねんきんネットや年金事務所でご確認ください。
遺族年金は「2階建て」です
日本の年金は、よく「2階建て」にたとえられます。
遺族年金も同じで、2つの年金が重なってできています。
1階は、すべての人に共通する遺族基礎年金。
2階は、会社員・公務員だけに上乗せされる遺族厚生年金です。
亡くなった方がどちらの年金に入っていたかで、家族が受け取れるものが決まります。
遺族年金の2階建て
2階 遺族厚生年金
いま会社員・公務員として働いている方や、以前に勤めていた方が亡くなったときの、上乗せの年金。
亡くなった方の収入に応じた額で、子どもがいない配偶者にも支給されます。
1階 遺族基礎年金
公的年金に入っていたすべての方に共通する、土台の年金。
受け取れるのは「子のある配偶者」または「子」で、金額は一律です。
※ ここでいう「子」は、18歳になって最初の3月31日(多くは高校を卒業するころ)まで、障害のある場合は20歳になるまでの子どもを指します。
ポイントは、1階の遺族基礎年金が「子どものいる家庭」だけの年金だということ。
子どもがいない、または子どもがすでに大きくなった家庭では、1階は受け取れません。
この「1階が出るかどうか」が、次の会社員と自営業のちがいにつながります。
会社員と自営業で、支えの厚みが変わります
同じ「働き手が亡くなる」でも、会社員だったか自営業だったかで、家族が受け取れる年金は大きく変わります。
会社員・公務員は1階と2階の両方、自営業・フリーランスは1階だけ、というのが基本です。
| 亡くなった方 | 子どものいる家庭 | 子どもがいない家庭 |
|---|---|---|
| 会社員・公務員 (厚生年金) | 遺族基礎年金 +遺族厚生年金 | 遺族厚生年金 |
| 自営業・フリーランス (国民年金だけ) | 遺族基礎年金 | なし |
※ 日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」より、代表的なケースを整理したものです。自営業の方には、国民年金だけの「寡婦年金」「死亡一時金」という別の給付が用意されている場合があります。
⚠️ 自営業で子どもがいないと、遺族年金は出ません
表の右下に注目してください。
自営業・フリーランスで、子どもがいない家庭は、遺族年金の対象になりません。
会社員のような2階(遺族厚生年金)がなく、1階も「子どものいる家庭」限定だからです。
※ このような家庭ほど、貯蓄や民間の保険での備えを自分で用意しておく意味が大きくなります。
子育て世帯を支える「遺族基礎年金」は、いくら?
まず1階の遺族基礎年金です。
これは金額が一律なので、はっきり分かります。
基本の額に、子どもの人数に応じた加算が足されます。
遺族基礎年金の金額(令和8年度)
基本の額
年額 847,300円
+ 子の加算
1人目・2人目:各 243,800円
3人目以降:各 81,300円
※ 日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」より(昭和31年4月2日以後生まれの方の額)。子のある配偶者が受け取る場合の金額です。
🧮 子どもが2人いる家庭の場合
847,300円 + 243,800円 + 243,800円 = 年額 1,334,900円
ひと月あたりにすると、約11.1万円になります。
※ 子どもが1人なら年額1,091,100円(月約9.1万円)です。会社員・公務員の家庭は、これに次の遺族厚生年金が上乗せされます。
⚠️ 子どもが巣立つと、遺族基礎年金は止まります
遺族基礎年金を受け取れるのは、子どもが18歳になって最初の3月31日(多くは高校を卒業するころ)まで。
障害のある子どもの場合は、20歳になるまでです。
いちばん下の子どもがこの年齢を過ぎると、遺族基礎年金は受け取れなくなります。
※ 会社員・公務員の家庭では、この「空白」を埋める中高齢寡婦加算というしくみが、次の章にあります。
会社員・公務員に上乗せされる「遺族厚生年金」は、いくら?
2階の遺族厚生年金は、いま会社員・公務員として働いている方や、以前に勤めていた方が亡くなったときの上乗せです。
金額は一律ではなく、亡くなった方のこれまでの収入と加入期間で決まります。
※ すでに退職している方の場合は、厚生年金に入っていた期間の長さなどの条件があります。詳しくは年金事務所でご確認ください。
おおまかには「その人が将来もらうはずだった老齢厚生年金の、報酬比例部分の4分の3」です。
給料が高かった人・長く働いた人ほど、遺族厚生年金も大きくなります。
🛟 若くして亡くなっても、最低限は保障されます
働き始めて間もない方が亡くなると、加入期間が短く、計算上の年金がとても小さくなってしまいます。
そこで、加入期間が25年(300か月)に満たない場合は、300か月ぶんとして計算してくれます。
20代・30代で亡くなっても、家族の支えが極端に薄くならないための配慮です。
🌉 中高齢寡婦加算:子どもが巣立ったあとの「空白」を埋める
会社員・公務員の夫を亡くした妻には、40歳から65歳になるまでの間、遺族厚生年金に 年額635,500円 が加算されます(一定の条件があります)。
子どもが18歳を過ぎて遺族基礎年金が止まったあとも、この加算が妻の暮らしを支えます。
※ 中高齢寡婦加算といいます。対象は、夫の死亡時に40歳以上65歳未満で子どもがいない妻、または40歳の時点で遺族基礎年金を受けていた妻などです。
遺族厚生年金は人によって金額が変わるので、「我が家はいくら」は一律には言えません。
正確な見込みは、ねんきんネットや年金事務所で確認できます。
次の章では、遺族年金だけでなく、暮らし全体で足りるかを見る方法を紹介します。
我が家は、足りる?足りない?
遺族年金の金額が分かっても、それだけでは「足りるかどうか」は判断できません。
大事なのは、これから入ってくるお金と、これから出ていくお金の差です。
残された家族の「入るお金」と「出るお金」
💰 入るお金
- ・遺族年金
- ・児童手当
- ・残された配偶者の収入
- ・貯蓄・すでに入っている保険
🧾 出るお金
- ・毎月の生活費
- ・子どもの教育費
- ・家賃や住宅の維持費
- ・葬儀などの一時的な費用
この差が足りていれば、大きな死亡保険はいりません。
足りない時期と金額がはっきりすれば、その分だけを保険で補えばよいと分かります。
これを一つずつ計算するのは大変なので、シミュレーターを用意しました。
👪 遺族年金・必要保障額シミュレーターに家族構成や収入を入れると、遺族年金・児童手当・配偶者の収入と、生活費・教育費・住居費を、配偶者が90歳になるまで1年ごとに突き合わせます。「いつ・いくら足りないか」と「保険でいくら備えればよいか」が、数字で見えます。
2028年から、遺族年金は見直されます
遺族年金のしくみは、2028年(令和10年)4月から段階的に見直される予定です。
「夫が働き、妻が家を守る」という昔の家庭を前提にしていた部分を、いまの共働きの時代に合わせる改正です。
見直しの主な方向
① 子どものいない配偶者の男女差をなくす
いまは、子どものいない配偶者への遺族厚生年金の受け取り方が、妻と夫で大きく違います。
これを男女で同じ扱いにそろえていきます。
② 給付を手厚くしつつ、期間を見直す
子どものいない現役世代の配偶者は、原則5年間の給付になる代わりに、その間の金額に上乗せ(有期給付加算)がつきます。
障害のある方や収入が十分でない方は、その後も受け取れる配慮があります。
③ 子育て世帯への支えは維持
子どものいる家庭への遺族基礎年金などは、引き続き支えられます。
※ 厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」より。実際には20年以上かけて少しずつ移る、複雑な移行のしくみです。自分に関わりそうな方は、その時期に最新の情報を確認してください。
大きな流れとして、遺族年金は「子育て世帯を手厚く、現役世代の再スタートを支える」方向に見直されていきます。
いま分かるのは今の制度なので、まずは現在の金額で「我が家はどうか」を確かめておくのがおすすめです。
死亡保険を見直すときは、遺族年金や団信でカバーされる分を差し引いて「足りない分だけ」を備えるのが基本です。金額に迷ったら、ねんきん定期便を手元に、FPや保険相談窓口で過不足を整理してもらいましょう。
まとめ:まず国の支えを知ってから、保険を考える
📝 覚えておきたいこと
- ・遺族年金は「遺族基礎年金(1階)+遺族厚生年金(2階)」の2階建て
- ・会社員・公務員は両方、自営業は1階だけ。自営業で子どもがいないと出ないことも
- ・遺族基礎年金は子どものいる家庭に年847,300円+子の加算(令和8年度)
- ・遺族厚生年金は収入で決まり、300か月保障や中高齢寡婦加算の支えがある
- ・暮らしていけるかどうかは、入るお金と出るお金の差で決まる
足りない分は、遺族年金・必要保障額シミュレーターで確かめられます。
死亡への備えというと、まず保険を考えがちです。
でも、その前に国の遺族年金という土台があります。
土台でどこまで支えられるかが分かれば、上乗せの保険はいくら必要か、自分で判断できるようになります。
使わずにすむなら、それがいちばんです。
それでも、支えのありかを知っている家族は、もしものときも前を向いて歩いていけます。
☂️ 遺族年金をふまえて民間の保険をどこまで持つかは、保険、入りすぎてない?で考え方を整理しています。
🩺 病気やけがで働けなくなったときの支えは、働けなくなったら、お金はどうなる?をどうぞ。
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よくある質問
Q. 共働きで、私にも収入があります。それでも遺族年金は受け取れますか?
A. 受け取れる場合が多いです。条件は「亡くなった方に生計を維持されていたこと」で、具体的には受け取る方の年収が850万円未満(または、おおむね5年以内に850万円未満になる見込み)であることが目安です。共働きでも、この範囲であれば対象になります。詳しくは加入している年金の窓口でご確認ください。
Q. 遺族年金に、税金はかかりますか?
A. かかりません。遺族基礎年金・遺族厚生年金は、所得税も住民税も非課税です(国税庁)。老齢年金は課税の対象になりますが、遺族年金は扱いがちがい、受け取った額に税金はかかりません。
Q. 遺族年金は、いつまで受け取れますか?
A. 年金の種類と受け取る方によって変わります。遺族基礎年金は、いちばん下の子どもが18歳になって最初の3月31日(多くは高校を卒業するころ)まで、障害のある子どもは20歳になるまで。遺族厚生年金は、妻の場合は原則として一生涯受け取れます(ただし夫が亡くなったとき30歳未満で子どもがいない妻は5年間)。夫や父母などが受け取る場合は、年齢の要件が別に定められています。
Q. 遺族年金は、請求しないと受け取れませんか?期限はありますか?
A. 自動では始まりません。年金事務所や市区町村の窓口へ「年金請求書」を出す手続きが必要です。年金を受け取る権利は、受けられるようになった日から5年で時効にかかります(日本年金機構)。落ち着いてからで大丈夫ですが、忘れないうちに手続きを進めておくと安心です。
Q. 自分の老齢年金と、両方を満額もらえますか?
A. 65歳以降は調整があります。会社員だった方などが自分の老齢厚生年金を受け取る場合は、まず自分の老齢厚生年金が支給され、遺族厚生年金はその差額の分だけが受け取れる形になります。両方を単純に足した金額にはならない、という点を覚えておくとよいです。
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