保険、入りすぎてない?
──「もしも」に、いくら備えるかの決め方
公開
「もしものときに、安心だから」——
保険は、そう思って入るものです。
その気持ちは、まちがっていません。
でも、こんな覚えはありませんか。
入ったきり、中身をよく知らない。
すすめられるまま、決めてしまった。
毎月引かれているけれど、いくらだったか思い出せない。
保険は、一度入ると見えなくなります。
そして気づかないうちに、家計のいちばん重たい場所に、何十年も居座り続けます。
この記事は、その中身をもう一度あけてみるために書きました。
📖 この記事でわかること
- ・保険の出番が、本当にあるのはどんなときか
- ・じつは、あなたはもう大きな保険に入っている
- ・自分に足りない分を、3つの質問で確かめる
- ・見直す前に、絶対にやってはいけないこと
🐷 この記事は、「投資したいけど、お金がない…」まず家計を見直して"種銭"をつくる3ステップの「ステップ2:固定費を削る」を、くわしく掘り下げたものです。
保険料は、30年で1,000万円を超えます
保険料は、固定費です。
一度決めたら、あとは毎月ずっと出ていきます。
しかもスマホ代とちがって、何十年も続くのが保険です。
では、みんないくら払っているのでしょうか。
公益財団法人が3年ごとに行っている調査に、その数字があります。
💰 世帯が1年間に払っている保険料
並べてみると、けっこうな金額だと思いませんか。
家や車と並ぶ、人生でいちばん大きな買い物のひとつなんです。
それなのに、中身を覚えていない——というのが、保険の不思議なところです。
※ 生命保険文化センター「2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査」より。個人年金保険を含みます。ただし平均は、たくさん払っている人に引き上げられます。金額の帯でいちばん多いのは「12万円〜24万円未満」(19.3%)で、次が「12万円未満」(17.8%)です。つまり「平均より少ない人」のほうが多数派です。ご自身の金額は、保険証券か口座の引き落としで確かめてみてください。
念のために書いておくと、これは「保険をやめましょう」という話ではありません。
金額が大きいからこそ、中身を知らないまま払い続けるのがもったいない、という話です。
では、どこまでが必要な分なのでしょうか。
保険の出番は、こんなときだけ
保険は「不安なこと」に掛けるものではありません。
不安なことすべてに掛けていたら、保険料で生活が回らなくなります。
保険が力を発揮するのは、次の2つが重なったときだけです。
ひとつは、めったに起きないこと。
もうひとつは、起きたら貯金ではとても払えないこと。
——この2つです。
☂️ 4つのうち、出番は1つだけ
| 貯金で払える | 貯金では、とても無理 | |
|---|---|---|
| よく 起きる | 貯金でいい 風邪で病院に行く。スマホの画面が割れる。 | そもそも保険にならない よく起きることを丸ごと保障すると、保険料が保険金と変わらない額になります。 |
| めったに 起きない | 貯金でいい 数日の入院。自転車の修理。 | ★ ここが保険の出番 大黒柱が亡くなり、残された家族に20年ぶんの生活費が必要になる。長く働けなくなる。 |
なぜ、右下だけなのでしょうか。
保険という仕組みを、そのまま見てみます。
保険は、たくさんの人が少しずつお金を出し合って、めったに起きない不幸に当たった人へまとめて回す仕組みです。
その運営には費用がかかります。
ですから加入者全体で見れば、払った合計より、戻ってくる合計のほうが小さくなります。
これは保険会社が不誠実なのではなく、仕組みとしてそうなっています。
だからこそ、貯金で払えることまで保険にすると、その差のぶんだけ損になりやすいのです。
逆に、貯金では絶対に届かないことについては、この仕組みが圧倒的に頼りになります。
——保険は、そこに集中させるのが基本の考え方です。
あなたはもう、大きな保険に入っています
ここで、いちばん大事な事実をお伝えします。
日本に住んで働いていれば、あなたはもう保険に入っています。
健康保険と、年金です。
給与明細で毎月引かれている、あれです。
自分で選んだ覚えがないので、保険だと思っていない方がほとんどです。
でも中身を見ると、民間の保険よりも先に、いちばん大きく守ってくれる保障になっています。
🛡️ もう入っている「3つの保障」
🏥 医療費が高額になったとき 高額療養費制度
医療費の自己負担には、月ごとの上限があります。年収約370〜770万円の方なら、医療費が100万円かかっても、自分で払うのは約9万円まで。残りは健康保険が負担します。「がんになったら何百万円」というイメージとは、だいぶ違います。
💼 働けなくなったとき 傷病手当金
会社員・公務員が病気やケガで働けない間、給与のおおよそ3分の2が、通算1年6か月支給されます。収入がいきなりゼロになるわけではありません。
👨👩👧 亡くなったあと 遺族年金
子のある家庭には遺族基礎年金として年額847,300円、さらに子1人あたり243,800円(第3子以降は81,300円)が加算されます。会社員・公務員なら、遺族厚生年金も上乗せされます。
※ 遺族基礎年金の額は令和8年度(2026年度)のものです(昭和31年4月1日以前生まれの方は844,900円)。子とは、18歳になった年度の3月31日までにある子などを指します。傷病手当金は健康保険の給付で、支給には待期期間(療養のため休んだ最初の連続3日間)などの条件があります。金額は標準報酬月額をもとに計算されるため、実際の手取りの3分の2とは一致しません。
📅 2026年8月から、高額療養費制度が少し変わる予定です。
月ごとの上限額が引き上げられます(年収約370〜770万円の区分で80,100円+1%→85,800円+1%)。ただし引き上げだけではありません。同時に年間の上限額(同区分で53万円)が新設されるため、治療が長く続く場合は、かえって負担が軽くなることもあります。2027年8月からは所得区分がさらに細かく分かれる予定です。くわしくは厚生労働省の公式ページをご確認ください。
民間の保険が埋めるのは、この公的保障で足りない残りの部分だけです。
ここを知らずに入ると、すでに守られている場所に、もう一度お金を払うことになります。
「二重に守る」のではなく、「二重に払う」ことになってしまうんです。
穴の大きさは、人によって違う
では、残った穴はどれくらいでしょうか。
じつはこれが、人によって大きく変わります。
いちばん差が出るのは、働き方です。
| 会社員・公務員 | 自営業・フリーランス | |
|---|---|---|
| 医療費の上限 高額療養費 | ある | ある(同じように使えます) |
| 働けない間の収入 傷病手当金 | 給与の約3分の2が 通算1年6か月 | なし |
| 亡くなったあと 遺族年金 | 遺族基礎年金 +遺族厚生年金 | 遺族基礎年金のみ (子がいない場合は対象外) |
※ 自営業・フリーランスの方が加入する国民健康保険には、原則として傷病手当金がありません(自治体が独自の給付を設けている場合を除きます)。お住まいの市区町村の窓口でご確認ください。
表のとおり、自営業・フリーランスの方は穴が2つ大きいことになります。
働けなくなったときの収入と、遺された家族の年金です。
同じ「保険を見直す」でも、会社員の方と自営業の方では、結論が変わってきます。
よく「保険はいらない」という話を目にします。
でも、その話をしている人が会社員なのか自営業なのかで、前提がまるで違うんです。
——ここが、保険の話がかみ合わない大きな理由です。
自分に必要かどうかは、3つの質問で決まる
ここまでを、自分に当てはめてみます。
次の3つの質問に答えてみてください。
むずかしい計算はいりません。
🔎 自分に必要な保険を、3つの質問で確かめる
質問1 いま自分が亡くなったら、お金に困る人がいますか?
死亡保障は、自分のための保険ではありません。遺された人のための保険です。
小さな子どもがいる、配偶者が自分の収入で暮らしている——そういう方には必要です。
独身で、扶養している家族がいないのであれば、大きな死亡保障を持つ理由は小さくなります。
そして必要な場合も、用意するのは遺族年金と貯金を差し引いた、残りの分だけです。
質問2 働けなくなったら、収入は止まりますか?
会社員・公務員なら、傷病手当金で給与の約3分の2が通算1年6か月出ます。ゼロにはなりません。
気にするとすれば、その先も働けなかったときです。
自営業・フリーランスの方は、ここがいちばん大きな穴になります。
傷病手当金がないので、働けなくなった月から収入が止まります。
質問3 その出費は、貯金で払えますか?
医療費は、高額療養費で月およそ9万円が上限です。
仮に3か月入院しても、医療費そのものは30万円弱にとどまる計算になります。
この金額を貯金から出せるなら、医療保険の優先度は下がります。
貯金がまだ薄いなら、そこを保険で埋めるという選び方もあります。
3つとも「困る人はいない・収入は止まらない・貯金で払える」なら、いま持っている保障は多すぎるかもしれません。
ひとつでも当てはまるなら、そこには保険の意味があります。
※ 高額療養費の対象になるのは保険が使える医療費だけです。差額ベッド代・入院中の食事代・先進医療の技術料・家族のお見舞いの交通費などは対象外で、別途かかります。
「貯める保険」は、ちょっと別の話
ここまでは「もしも」に備える保険の話でした。
でも保険には、もうひとつの顔があります。
貯蓄型と呼ばれる、貯まる保険です。
終身保険や養老保険、学資保険などがこれにあたります。
これらは「万一の保障」と「お金を貯めること」が、1本の商品になっています。
1本にまとまっていると手間はかかりませんが、そのぶん中身が見えにくくなります。
よく比べられるのが、この2つを分ける考え方です。
保障は保険料の安い掛け捨てで確保して、浮いた差額は自分で運用する。
どちらが手元に多く残るかは、条件によって変わります。
貯蓄型保険とNISAの比較シミュレーター
同じ月額で「貯蓄型保険」と「掛け捨て+NISA」を並べたら、どちらがどれだけ増えるのか。途中でやめたときの元本割れや、万一のときに使えるお金まで含めて試せます。
見直す前に、知っておきたいこと
さて、いざ見直そうというとき。
先に知っておいてほしいことがあります。
とくに最初のひとつは、取り返しがつかないことがあります。
⚠️ 先に解約しないでください
順番を、まちがえない
新しい保障が始まったことを確認してから、古いほうを解約します。逆にすると、そのあいだ保障のない期間ができてしまいます。
健康状態によっては、入り直せない
保険に入るときは、健康状態を告知するのがふつうです。持病や通院歴があると、断られたり、条件がついたりすることがあります。先に解約すると「新しい保険に入れず、古い保険にも戻れない」ということが起こり得ます。
年齢が上がると、保険料も上がる
同じ保障でも、入り直すと保険料が高くなるのが一般的です。「いったんやめて、あとで考える」が、思ったより高くつくことがあります。
貯蓄型は、途中でやめると元本割れしやすい
払い込みの途中で解約すると、戻ってくるお金は払った額を下回ることが多くなります。「やめる」と決める前に、いくら戻るのかを保険会社に確認してください。
通信費の見直しと、ここが大きく違うところです。
スマホは合わなければ、また戻せます。
でも保険は、一度手放すと戻れないことがあります。
だから「減らす」の前に、「確かめる」を置いてください。
必要な保障額は家族構成や働き方で変わります。保険を見直すときは、遺族年金や高額療養費など公的保険でカバーされる分を差し引いて考えるのが基本です。迷ったらFPや保険相談窓口で過不足を整理してもらいましょう。
お金が貯まるほど、保険はいらなくなる
見直したあと、そのお金はどこへ行くのでしょうか。
じつは、見直しの結果は2つに分かれます。
ここを混ぜて考えると、話がおかしくなります。
🔀 見直しの結果は、2種類あります
① 減らした場合 = 本当に浮く
いらない保障をやめて、毎月の支払いそのものが下がった場合です。
これは通信費の見直しと同じで、浮いたお金がそのまま手元に残ります。
② 分けた場合 = じつは、浮いていない
貯蓄型をやめて、掛け捨てとNISAに分けた場合です。
出ていくお金は、あまり変わらないこともあります。
②のほうを、よく見てください。
これは「安くなった」のではありません。
同じものを、自分で買うようになっただけです。
貯蓄型保険は、「万一の保障」と「お金を貯める部分」が1本になった商品です。
それをやめて掛け捨てとNISAに分けるのは、1本だったものを2つにほどいて、自分の手で持つということ。
買っているものは、だいたい同じなんです。
——では、何のために分けるのでしょうか。
🔓 分けると、2つのことが起きます
見えるようになる
1本になっているあいだは、いくらが保障で、いくらが積み立てなのか分かりません。分けると、両方の金額が自分で見えます。
使えるようになる
保険の中に積み立てられたお金は、途中で引き出すと元本割れしやすくなります。つまり、いざというとき使いにくいお金です。自分の口座にあれば、必要なときに必要なぶんだけ出せます。
この2つ目が、じつは大きいんです。
ここで、この記事の最初の話に戻ります。
保険の出番は「貯金では、とても払えない」ときでした。
使えるお金が増えれば増えるほど、その「貯金で払える」の範囲は広がります。
すると、保険で埋めるべき穴は、自然と小さくなっていきます。
——お金が貯まるほど、保険はいらなくなっていくんです。
だから①の場合、つまり本当に浮いたときも、行き先は同じです。
浮いたぶんを生活費に混ぜてしまうと、いつのまにか使ってしまって、何も残りません。
おすすめは「保険料に、今までどおりの金額を払っているつもり」になること。
給料が入った時点で、自動でNISAの積立に回るようにしてしまいましょう。
まず家計を見直して"種銭"をつくる3ステップ
「固定費を削る → 浮いたお金をNISAへ」という全体の流れは、こちらのハブ記事でやさしく解説しています。
保険は、安心を買うものです。
その安心は、たしかに必要です。
でも、すでに持っている安心にもう一度お金を払うのは、少しもったいない話です。
まず、給与明細を見てください。
あなたはもう、大きな保険に入っています。
そのうえで、残った穴はどこか。
困る人がいるか、収入が止まるか、貯金で払えるか——3つの質問だけです。
減らすことが正解ではありません。
中身を知って、自分で決めた状態にすることが正解です。
その結果「今のままでよかった」でも、それは立派な見直しです。
まずは、保険証券を1枚、探すところから。
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よくある質問
Q. 医療保険はいらない、ということですか?
A. そうとは限りません。判断の分かれ目は「その出費を、貯金で払えるかどうか」です。日本には高額療養費制度があり、医療費の自己負担には月ごとの上限があります。年収約370〜770万円の方なら、医療費が100万円かかっても自己負担は約9万円までです。仮に3か月入院しても、医療費そのものは30万円弱にとどまる計算になります。この金額を貯金から出せるなら、医療保険の優先度は下がります。一方で、貯金がまだ薄い時期や、差額ベッド代・食事代・家族の交通費など高額療養費の対象外になる出費が心配な方にとっては、保険で埋めるという選び方もあります。なお2026年8月からは、この月ごとの上限額が引き上げられる予定です(同じ区分で80,100円+1%→85,800円+1%)。あわせて年間の上限額(同区分で53万円)が新設され、治療が長く続く場合はかえって負担が軽くなることもあります。
Q. 保険を見直すとき、まず今の保険を解約してもいいですか?
A. おすすめしません。順番が逆です。新しい保障が始まったことを確認してから、古いほうを解約してください。理由は2つあります。ひとつは、解約から次の契約までのあいだに保障のない期間(空白期間)ができてしまうこと。もうひとつは、健康状態によっては新しい保険に入れないことがあるためです。保険には加入時に健康状態の告知が必要なものが多く、持病や通院歴があると、加入を断られたり、条件がついたりすることがあります。先に解約してしまうと「新しい保険に入れず、古い保険にも戻れない」という状態になりかねません。また、年齢が上がるほど保険料は高くなるのが一般的なので、入り直すと同じ保障でも保険料が上がることがあります。
Q. 会社員と自営業では、何が違いますか?
A. 大きく2つ違います。ひとつは、病気やケガで働けなくなったときの収入です。会社員・公務員が加入する健康保険には傷病手当金があり、給与のおおよそ3分の2が通算1年6か月支給されます。一方、自営業・フリーランスの方が加入する国民健康保険には、この傷病手当金がありません(自治体によって独自の給付がある場合を除きます)。もうひとつは、亡くなったあとに遺族が受け取る年金です。会社員・公務員は遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金が上乗せされますが、自営業の方は原則として遺族基礎年金のみです。遺族基礎年金は子のある家庭が対象なので、子がいない場合は支給されません。つまり自営業の方は、公的保険で埋まらない「穴」が会社員より大きくなります。そのぶん、民間の保険や貯金で備える必要性は高くなります。なお、高額療養費制度は国民健康保険にもあり、こちらは会社員と同じように使えます。
Q. 独身なら、生命保険(死亡保障)はいらないですか?
A. 必要性は低い傾向にあります。死亡保障は「自分が亡くなったあと、お金に困る人」のための保険だからです。自分のために使うお金ではありません。独身で、扶養している家族がいないのであれば、大きな死亡保障を持つ理由は小さくなります。ただし例外もあります。親を経済的に支えている場合や、自分に万一のことがあったときの葬儀費用などを家族に負担させたくない場合です。葬儀費用は数十万円から百万円台が目安とされますが、これは貯金でまかなえる範囲であることも多く、その場合は保険にする必要性はさらに下がります。逆に、将来結婚して家族ができたときには、そのタイミングで改めて考えれば十分です。保険は一生同じものを持ち続けるものではなく、家族構成が変わるたびに見直すものです。
Q. 高額療養費制度は、これから変わるのですか?
A. 変わる予定です。厚生労働省は、2026年8月と2027年8月の2段階で高額療養費制度を見直すことを予定していると公表しています。2026年8月からは、月ごとの自己負担限度額が引き上げられます(年収約370〜770万円の区分で80,100円+1%→85,800円+1%)。同時に、年間(8月から翌年7月まで)の上限額が新設されます。同じ区分なら年53万円で、月ごとの上限に達しない月が続いても、年間の上限に達したあとは負担が発生しません。そのため、治療が長く続く方はかえって負担が軽くなる場合があります。また、直近12か月で3回以上上限に達した場合に4回目以降が軽くなる「多数回該当」(年収約200〜770万円の区分で44,400円)は、現行の水準が維持されます。2027年8月からは所得区分がさらに細かく分かれ、年収約650〜770万円の区分では110,400円+1%になる予定です。最新の内容は厚生労働省の公式サイトでご確認ください。
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