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暴落したらどうする?

──下がったときに、やっていいこと・ダメなこと

公開

嵐雲の下で不安そうにしているコブタの貯金箱と、雨上がりの明るい丘で穏やかに立っているコブタの貯金箱のイラスト

口座を開いたら、資産がごっそり減っていた——。
投資を続けていれば、いつか必ず出会う場面です。
そのとき何をするかで、その後の結果は大きく変わります

このページでは、下がっている最中の「行動」だけに絞ってお話しします。
やっていいこと、やらないほうがいいこと。
公的な機関が出しているデータをもとに、いっしょに整理していきます。

📖 この記事でわかること

  • ・下がったときに、まずやっていいこと
  • ・売る前に知っておきたい、NISAの2つの落とし穴
  • ・相場が荒れているときに増える、危ない勧誘の見分け方

売らないかぎり、損は決まっていません

まず、いちばん大事なところから。
画面に出ているマイナスの数字は、今この瞬間に売ったら、いくら損をするかという金額です。
裏を返せば、売らないかぎり、その損はまだ決まっていません。
下がったのは「値札の数字」だけで、持っているものは暴落の前とまったく同じだからです。

しかも暴落の値下がりは、「下がりそうだ」という空気だけで起きることもめずらしくありません。
中身の会社がその日を境に、いっせいに悪くなったわけではないのです。

売った瞬間に、はじめて損が現実のものになります。
手元には現金が戻りますが、売った商品はもう自分のものではありません
値段が戻り始めても、その上がり分を受け取れるのは、持ち続けた人だけです。

大きな下落そのものは、これからも起こります。
ブラックマンデー、ITバブル崩壊、リーマンショック、コロナショック——
過去のペースや、そのあと市場がどうなってきたかは、投資をはじめる前に確かめたい3つの土台の記事でくわしく見ています。

🌊 この記事で扱うのは「起きたあと」の話

暴落が来るかどうかは、誰にも予想できません。
予想できないものを当てにいくより、来たときの動き方を先に決めておくほうが現実的です。
ここから先は、その「動き方」をひとつずつ見ていきます。

📌 この記事が前提にしているもの

ここからの話は、全世界株式やS&P500といった指数に連動する投資信託を、長く積み立てている場合を想定しています。
こうした指数は、中身の会社が定期的に入れ替わるしくみになっています。
1社が力を失っても、指数そのものは残って先へ進んでいきます。
「待っていたら戻ってきた」という過去の傾向は、この分散のうえに成り立ってきました。

いっぽう、1社だけの株を持っている場合は事情が変わります。
その会社が立ち行かなくなれば、株価が戻ることはありません。
「下がっても待つ」がそのまま当てはまるとはかぎらず、会社そのものの状況を確かめる必要が出てきます。

国の年金を運用する組織も、同じように暴落を経験してきました

わたしたちの公的年金の積立金は、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)という国の組織が運用しています。
規模は約293兆円(2026年3月末)。
その成績が、毎年ぜんぶ公表されています。

この数字が参考になるのは、プロが運用しても下がるときは下がると分かるからです。
リーマンショックが起きた2008年度、GPIFの収益率はマイナス7.57%でした。
では、そこで投げ出していたらどうなっていたか——結果が下の表です。

見る期間 収益率
2008年度(リーマンショック)
1年だけを切り取ると
−7.57%
2001〜2025年度の平均
その暴落を含めた25年間・年率
+4.67%
同じ期間の累積の収益額
元本に上乗せできた分
+196兆9,306億円

出典:年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)「2025年度業務概況書」。運用資産額は2026年3月末時点。

同じ組織の、同じ運用方針です。
それでも1年で切り取るか25年で見るかで、風景がまったく違って見えます。
暴落の年は、長い線のなかの一点でしかなかった、ということになります。

GPIFはもうひとつ、興味深い検証を公表しています。
過去約39年ぶんのデータで、今の運用方針だったらどうなっていたかを調べたものです。
1年単位で見ると最悪はマイナス22.2%、最良はプラス30.7%と大きく振れました。
ところが10年単位(年率)で見ると、過去に一度もマイナスがなく、いちばん悪い時期でもプラス0.5%に収まっています。

出典:GPIF「2025年度業務概況書」基本ポートフォリオの検証(分析期間1985年4月〜2024年3月)。
過去の実績であり、将来の成果を保証するものではありません。GPIFは国内外の株式と債券に分散しており、株式だけに投資した場合とは値動きの幅が異なります。

短い期間ほど、結果は運に左右されます。
長い期間ほど、ばらつきは小さくなってきました。
だから「あと何年持てるか」が、いちばんの判断材料になります。

下がったときに、やっていいこと

ここからが本題です。
マイナスの表示を見たとき、投資の行動としてできることは、じつは2つだけです。
どちらを選んでも、あわてて売るよりは落ち着いた形になります。

🔁 ① 積立を、そのまま続ける

毎月同じ金額を買っていると、値段が下がったときは同じ1万円でより多く買えます
高いときは少なく、安いときは多く——自動的にそうなるのが積立の性質です。
相場が戻ったとき、この安く買えた分が結果を押し上げます。

  • ※ 続けるかどうかは、相場ではなく家計の状況で決めてください。毎月の生活が苦しいなら、金額を下げる・いったん止めるという判断もあります。

😌 ② 手を止めて、そのまま持っている

下がっていく値段を見ているうちに、買い続けるのが不安になってしまう。
頭では「続けたほうがいい」と分かっていても、買えなくなってしまう。
そうなることは、めずらしくありません。

そういうときは、積立をいったん止めて、そのまま持っているだけでも大丈夫です。
買い足せなくても、いちばんの失敗である「あわてて売る」は避けられます

投資の行動としては、ここまでです。
買い続けるか、手を止めて持ち続けるか。
基本的に、道はこの2つだけです。

②になった方へ。見なおすのは、相場ではなく家計です

怖くて手が止まってしまうのは、気持ちが弱いからではありません。
多くの場合、投資に回したお金が「当面使う予定のないお金」の範囲を超えているというサインです。

退職金や保険金のように、大きなお金が一度に入って、一度に投資した場合も同じことが起こります。
金額の大きさに気持ちがまだ慣れていないと、ふだんなら気にならない値動きが急に重く感じられます。
それは「自分にはまだ扱いきれない大きさのお金」だったというサインです。

相場は自分では動かせませんが、この土台のほうは自分で動かせます。

🏦 生活防衛資金を数えなおす

預金がいくらあるかを、あらためて確かめてみましょう。
生活費の半年ぶんくらいが手元にあれば、売らずに待てます
不安の正体が「相場」ではなく「手元の現金の少なさ」だったと気づくこともあります。

✂️ 家計の固定費を見なおす

通信費や保険料を見なおして毎月5,000円浮けば、年6万円ぶんの余力が生まれます。
手元のお金に余裕ができるほど、値下がりしても生活に困らなくなります。
値動きはただ見ていることしかできませんが、家計の見直しは今日から自分で進められます。
「できることをやっている」という実感も、不安な時期の支えになります。

生活に困らないお金が手元にあると、値下がりそのものが気にならなくなっていきます。
たとえ気になったとしても、手を止めずに積立を続けられます
いま②になってしまう方も、土台さえ整えば①を続けられるようになります。

「このまま積立を続けたら、何年後にどうなるか」は積立シミュレーターで数字にできます。
今の下落を長い時間軸のなかに置きなおすと、気持ちが少し落ち着きます。

積立投資は、ネット証券の口座があれば少額から始められます。NISAは、その口座の中で使える「税金がかからない枠」です。まずはこの枠から使うと、同じ積立でも手取りが増えます。口座を選ぶ際は、手数料の安さと積立設定のしやすさを比較するのがおすすめです。

下がったときに、やらないほうがいいこと

こちらは、あとから取り返しがつきにくいものを集めました。
とくに2つ目は、よかれと思って手を出してしまう方が多い落とし穴です。

🙅 ① 不安だから、全部売る

いちばん多い失敗です。
売った瞬間に損が確定し、そのあと戻る局面には乗れません。
売るとしても、まず一部だけにして、様子を見る形もあります。

🙅 ② 損を確定させて、税金で取り返そうとする

いったん売って損を確定させ、他の利益と相殺して税金を減らす「損出し」という手があります。
ただしこれは、売って買い戻すタイミングを自分で判断する必要のある、上級者向けの技です。
始めたばかりのうちは、考えなくて大丈夫です

手数料もかかりますし、なにより長く持ち続けるという前提を自分から崩すことになります。
税金を少し減らすために、値上がりする局面を取り逃がしては本末転倒です。

  • ※ そもそもNISA口座では成立しません。NISAの損失は税制上「ないもの」として扱われ、他の口座の利益との損益通算も、翌年以降への繰越控除もできないためです。
  • ※ さらにNISAでは、売った分の非課税枠が戻るのは翌年以降になります(簿価の分)。
  • ※ 出典:国税庁タックスアンサーNo.1535、金融庁NISA特設ウェブサイト。税金の取り扱いは個別の事情で変わるため、詳しくは税務署か税理士にご確認ください。

🙅 ③ 借りたお金で買い増す

「安いうちに」と思っても、カードローンや信用取引には返済の期限がつきます。
相場が戻るまで待てるかどうかは、期限のないお金かどうかで決まります
買い増すなら、当面使う予定のない余裕資金の範囲にとどめる形が安全です。

🙅 ④ 「今だけ」の儲け話に乗る

相場が荒れると、不安につけこむ勧誘が増えます。
警察庁の統計では、2025年のSNS型投資詐欺は9,523件・被害額1,288.0億円で、前年から件数・金額とも約1.5倍に増えました。
きっかけの約8割は、広告のバナーとダイレクトメッセージだったと報告されています。

こんな言葉が出てきたら、いったん止まる

  • ・「必ず儲かる」「元本保証」
  • ・「あなただけに」「今日中に」
  • ・有名人の名前や写真が使われている

出典:警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(令和8年5月22日公表)。相手が金融庁の登録を受けた業者かどうかは、金融庁のウェブサイトで確認できます。

それでも売りたくなったら、確かめることはひとつ

とはいえ、売ってはいけないわけではありません。
本当に必要なら、売るのは正しい判断です。
決める前に、この1つだけ自分に聞いてみてください。

売らなくても、今月の生活は回りますか?

🙆 回るなら、売らなくて大丈夫です

値下がりは、今の暮らしには影響していないということです。
気持ちが落ち着いてから考えても、遅くはありません。

🙋 回らないなら、売って現金にしてかまいません

暮らしのほうが先です。
必要な分だけ現金にするのは、不安にあおられた行動ではありません。

売るかどうかを決めるのは、相場ではなく自分の暮らしです。
どれだけ大きく下がった日でも、暮らしが回っているなら、急いで売る理由はありません。
確かめることは、これだけで十分です。

💡 ここで気づいたら、次に活かせること

近いうちに使う予定のあるお金が投資に入っていた——。
もしそうだったなら、下がったこと自体よりお金の置き場所のほうに原因があります
値動きのある商品は、いつ戻るかが決まっていません。
数年以内に使うと決まっているお金とは、相性がよくないのです。

逆に、使うのが10年、20年先のお金なら、下がっても待つ時間がたっぷりあります。
たとえば教育費も、使う時期までの年数しだいで、投資で育てる部分と預金で確保する部分に分けられます(くわしくは教育費の記事で)。
「いつ使うか」で置き場所を決める——今回の経験は、その見直しのきっかけになります。

まとめ:下がった日に、できること・できないこと

📉 下がった日のチェックリスト

  • ・売らないかぎり、損は確定しない
  • ・できることは2つだけ。積立を続けるか、手を止めて持ち続けるか
  • ・手が止まるなら、生活防衛資金と家計の固定費を見なおす
  • ・損を確定させて税金で取り返そうとしない(NISAではそもそもできない)
  • ・借りたお金では買わない。うまい話には近づかない

相場を当てることも、下げを止めることも、わたしたちにはできません。
できるのは、積立を続けるか、手を止めて持ち続けるか——それだけです。
できることが少ないと知っていれば、下がった日にあわてずに済みます
それが、いちばんの備えになります。

小道を一歩ずつ歩いて進んでいくコブタの貯金箱のイラスト

暴落は、投資をやめる合図ではありません。
長く続けていれば、何度も通り過ぎていくものです。
次に来た日も、いつもどおりの毎日を続けていきましょう。

🌱 これから始める方は、投資をはじめる前の3つの土台から読んでみてください。
🧺 「何を買えばいいか」で迷っている方は、NISAで何を買う?もあわせてどうぞ。

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よくある質問

Q. 暴落したら、積立はいったん止めたほうがいいですか?

A. 積立を止めるかどうかは、相場ではなく家計の状況で決めるのが基本です。毎月の生活が回らないほど苦しいなら、金額を下げる・いったん止めるという判断はあります。一方で家計に余裕があるなら、下がっている間も同じ金額で買い続けるほうが、同じ1万円でより多くの口数を買えます。相場が戻ったとき、この「安いときに買えた分」が効いてきます。なお、積立の停止や金額変更は、多くの金融機関でいつでも手続きできます(再開も可能です)。

Q. NISAで持っている商品が値下がりしました。売って損を確定させれば、税金が戻りますか?

A. 戻りません。NISA口座で生じた損失は税制上「ないもの」とみなされ、特定口座や一般口座の利益との損益通算も、翌年以降への繰越控除もできません(国税庁タックスアンサーNo.1535)。さらにNISAでは、売却しても非課税枠が戻るのは翌年以降(売った商品の簿価の分)になります。「損を確定させる意味がある」と思って売ると、税金の得もないまま枠だけ使い切ることになりかねません。なお、課税口座で使われる「損出し」は売って買い戻すタイミングを自分で判断する上級者向けの手法で、始めたばかりの方が無理に覚える必要はありません。税金の取り扱いは個別の事情で変わるため、詳しくは税務署か税理士にご確認ください。

Q. 「今が買い時」と言われました。まとめて買ってもいいですか?

A. 判断の分かれ目は、そのお金が「当面使う予定のない余裕資金かどうか」です。生活費や近い将来に使う予定のお金、まして借りたお金で買い増すのは、下がったときに耐えられなくなるため避けたい形になります。また、相場が荒れている時期は投資の勧誘も増えます。SNSやダイレクトメッセージで持ちかけられる「必ず儲かる」「元本保証」といった話は、警察庁が注意を呼びかけているSNS型投資詐欺の典型的な入り口です。相手が金融庁の登録業者かどうかは、金融庁のサイトで確認できます。

Q. 個別の会社の株が下がっています。これも同じように待てばいいですか?

A. この記事の内容は、全世界株式やS&P500といった指数に連動する投資信託を長く積み立てている場合を想定しています。指数はたくさんの会社に分散されていて、中身の会社も定期的に入れ替わるため、1社が力を失っても指数自体は残り続けます。いっぽう1社だけの株は、その会社が立ち行かなくなれば戻ることがありません。「下がっても待つ」という考え方がそのまま当てはまるとはかぎらず、値段だけでなく会社そのものの状況(業績や財務など)を確かめる必要が出てきます。個別銘柄をどうするかの判断は個別性が高いため、当サイトでは具体的な助言は行っていません。必要に応じて、金融機関や有資格の専門家にご相談ください。

Q. iDeCoが値下がりしています。どうすればいいですか?

A. iDeCoは原則60歳まで引き出せないしくみのため、値下がりしたからといって現金化して逃げるという選択自体がありません。裏を返せば、あわてて売らずに済む構造になっているとも言えます。どうしても値動きが気になる場合は、これから積み立てる分の商品を変える「配分変更」や、今ある資産を組み替える「スイッチング」という手続きが用意されています。ただし下がった直後に安定型へ全部移すと、戻る局面を取り逃がすことにもなります。受け取りまでの残り年数を踏まえて考えるのが大切です。

免責事項

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